9月30日に再生医療から趣向を変えてCTC診断セミナーというWebinarを開催しました。今回、サーモフィッシャーサイエンティフィック様によるリキッドバイオプシー研究で使用される最新技術に加え、S-MPFを用いたCTC分離の具体的な状況についてお話いただきました。貴重なご講演をいただき、スピーカーの先生方並びにご参加いただきました皆様に感謝申し上げます。
血中循環腫瘍細胞(CTC)は、がん組織から血管内に侵入し、血流に乗って全身を循環する腫瘍細胞です。CTC研究は1869年にオーストリアの医師トーマス・アシュワースががん患者の血液中に腫瘍細胞を発見したことに始まります。
この血中を流れる腫瘍細胞を如何にして捉えるか、その捉えた細胞が腫瘍細胞であることをどのように評価するかが現在の課題とされています。S-MPFを用いて血液中よりサイズの大きい細胞を分離すると、クラスター化した細胞など、すでに販売されているデバイスと同様の細胞を分離できることが報告されていますが、今回のご講演では、この分離した細胞はCTC以外にも、CTEC(Circulating Tumor Endothelial Cell)と呼ばれる細胞を含むCRC(Circulating Rare Cell)が分離できたという内容が印象的でした。
CTEC(Circulating Tumor Endothelial Cells)は、血液中を循環する腫瘍由来の内皮細胞です。これらの細胞は、腫瘍の血管新生(新しい血管の形成)に関与しており、がんの進行や転移に重要な役割を果たすといわれています。そのため、CTECの検出と分析は、がんの診断や治療効果のモニタリングに役立つとされています。CTCが血中を流れる腫瘍細胞でその腫瘍の特性を表すものだとしたら、CTECはそのがんが進行しているか、転移しているかなどの状況を反映するものだと考えられます。
がんの治療には様々な手法がとられますが、近年新しいものとして血管新生阻害薬があります。これは腫瘍への血管新生を阻害することでがんの進行を抑え、兵糧攻めのような形で働く薬だといわれています。CTECは主にこれらの薬剤開発に応用できるかもしれないと考えながら講演を聞いていました。
ご講演の中では、S-MPFがCTCやCTECの検出精度が良くわからないため、今後さらに検討が必要であるという内容もありましたが、これは臨床検体に含まれるCTCの真の値がわからないため、S-MPFに限らない、依然としてCTC分離の課題だと思います。
がん研究はまだ不明なことも多く、今回S-MPFでCTCとCTECが鑑別できるようになってきたのもまた一つの進歩だと感じました。様々なデバイスや研究手法がありますが、日々工夫を凝らして研究されている先生方に深く敬意の念を表するご講演でした。
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